【一斉休校】文科省通知 「学校、クラスター化の危険」

教育新聞

新型コロナウイルス感染症(新型肺炎)の感染拡大を防ぐため、安倍晋三首相が3月2日から春休みまで全国の小中高と特別支援学校の臨時休校を要請したことを受け、文科省は2月28日、都道府県教委などに対し、学校保健安全法に基づく臨時休校を要請する通知を出した。文科省が全国の学校に一斉休校を求める通知を出すのは、日本の学校教育史上これが初めて。記者会見した萩生田光一文科相は「いままでは感染ルートが一定程度把握できていたが、なぜその地域で発生したのかわからない発症者が出てきた。いまは誰1人発症者がいない自治体でも、学校で子供たちに感染する事態が起これば、一瞬にしてクラスター化する危険がある。直ちに対応するのが先だ」と述べ、前例のない全国一斉の臨時休校を急きょ要請した政府判断に理解を求めた。

閣議後会見で通知について説明する萩生田光一文科相

通知は文科事務次官名で出された。臨時休校の期間や形態については、「地域や学校の実情を踏まえ、学校設置者の判断を妨げるものではない」と明記し、自治体の裁量に委ねた。また、「卒業式などを実施する場合には、感染防止措置を講じたり、必要最小限の人数に限って開催したりするなどの対応をとってほしい」として、卒業式などの一律中止を求めているわけではないと説明した。

臨時休校の期間について、萩生田文科相は「千葉市では小中学校の休校は3月3日から開始したいといい、沖縄県や高知県からは3月4日からの実施を考えているとの相談があった。こういった地方自治体の判断を尊重したい」と述べた。また、臨時休校を終える判断については「自治体によって春休みの期間は異なる。北海道のように一足先に対応して、感染に一定の終息が確認でき、児童生徒の安全が確保できるのだとすれば、その時点で北海道庁の判断で(臨時休校に)期限を切ることは、決して否定するものではない」と述べ、自治体の独自判断によって春休み前に学校が再開される可能性に含みを残した。

通知について説明する矢野和彦審議官(右)と平山直子課長

通知では、臨時休校の留意点として、次の項目を挙げた。

<保健管理>感染拡大防止のための臨時休校措置の趣旨を児童生徒に理解させ、人の集まる場所への外出を避け、基本的に自宅で過ごすよう指導する。自宅でも咳(せき)エチケットや手洗いなどの感染症対策を行うよう指導する。

<教育課程>児童生徒が授業を十分に受けられないことで学習に著しい遅れが生じないよう、家庭学習を適切に課すなどの必要な措置を講じる。児童生徒の各学年の課程修了や卒業認定には柔軟に対処し、進級や進学などに不利益が生じないよう配慮する。臨時休業によって教育課程の授業時数を下回った場合、そのことのみで学校教育法施行規則に違反するとはされない。

<教員の加配や学習指導員の配置>文科省として、公立学校の教員加配や学習指導員の配置に必要な支援を自治体の要望を踏まえて行う。

<教職員の出勤などの服務>公立学校の教職員は基本的には勤務するが、教職員本人が罹患(りかん)した場合には病気休暇を取得させる。教職員が濃厚接触者であるなど感染症がまん延する恐れがある場合には、在宅勤務や学校に出勤させないようにする。また、教員の在宅勤務や時差出勤を推進する。

<障害のある幼児児童生徒>特別支援学校には1人で自宅にいられない幼児児童生徒がいることを想定し、各自治体の福祉部局などと連携して居場所の確保に取り組む。居場所の確保ができない場合、必要最小限の人数に絞って登校させるなど、特段の配慮を払う。

<高校入学者選抜>試験会場の清掃やアルコール消毒、こまめな換気、咳エチケットや手洗いの徹底など感染防止措置を講じた上で実施する。感染者や感染が疑われる者への受験機会を確保するため、追試験の実施などを検討するとともに、入学志願者や保護者への情報提供、相談対応に努める。

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通知を受けて、文科省の矢野和彦官房審議官(初等中等教育局担当)と平山直子・初等中等教育局健康教育・食育課長は同日、記者団に通知の考え方について補足と背景を説明した。主なポイントは次の通り。

<臨時休校の期間>

地域や学校の実情を踏まえ、設置者によるさまざまな工夫があっていい。3月2日から春休みまでの間、児童生徒の学習状況、家庭状況を踏まえ、設置者において適切な期間を設定するよう工夫してほしい(矢野審議官)。

<臨時休校の期間を春休みまでとした理由>

厚労省が示している一般的な潜伏期間は2週間だが、感染経路が明らかではない患者が散発的に発生している状況だ。児童生徒の安全を最優先に考え、できるだけ長い期間として、春休みまでを一つの区切りとして示した。春休みの期間は学校種や地域によって違うので、(自治体は)地域や学校の状況に応じてベストな方法を考えてほしい(平山課長)。

<臨時休校を止めるタイミング>

春休みが終わる頃には、めどがついていると認識している。4月以降に長引く可能性は、感染の状況次第だと思う(平山課長)。

<通知表や成績の評価>

成績の評価は期末試験で行う学校が多いかもしれないが、期末試験はなにがなんでもやらなければいけないものではない。成績はまさに平素の成績を評価するもので、それが修了認定や卒業認定につながる。児童生徒に不利益が生まれないように、平素の成績を適切に評価してほしいと考えている(矢野審議官)。

<部活動や交流試合>

通知では示していないが、教室での学習を止めるわけなので、部活動も当然自粛いただくものと理解している(矢野審議官)。

新型インフルエンザが流行したときに、対外交流試合で感染が広がった事例がある。そのときはスポーツドリンクの飲み回しや、汗をぬぐったタオルの交換が感染源になった。そうした事例を踏まえると、離れた地域の学校を相手にした交流試合によって感染が広がる可能性もあるので自粛してほしい(平山課長)。

<幼稚園>

今回要請の対象にしていない。幼稚園は8割の施設で「預かり保育」を実施しており、保護者の就労などによって保育の必要性がある子供の受け皿ともなる。そうした状況を踏まえ、全国一斉の休業要請は行わないことにした。もちろん、園児の罹患(りかん)があった場合や、地域全体の感染拡大防止を目的とした積極的な臨時休業はしっかりやっていただきたい(矢野審議官)。

<学校以外で子供が集まる場所への対応>

学習塾などの民間教育産業、児童館などの公共施設で子供が集まりやすい場所、ゲームセンターのような施設、テーマパークなどについても、ぜひ協力してほしいと考えており、関係省庁と協議している(平山課長)。

回数減、持ち込み可…定期テスト見直しの動き 「教員の意識も変わった」ある中学校の取り組み

西日本新聞

 全国の中学校で、学期ごとの中間や期末試験といった定期テストを見直す動きが出ている。九州では、福岡県の須恵町立須恵中が本年度から、年5回の定期テストを6月と11月の2回に減らし、試験中に自学用ノートの持ち込みを認めるようにした。進学などで参考にされる通知表のためのテストになっている現状から、生徒の学ぶ意欲を高めて基礎学力の定着、向上を目指す実験的な取り組みとして注目される。

 2学期制を導入する須恵中は生徒数約500人の中規模校。3年前に着任した栗原美喜男校長(57)は、どの学校でも実施している定期テストの在り方に疑問を感じていた。「卒業直前にもあるがこの時期だと成績に反映されず、むしろ入試の妨げになっている」。テストの意義を問い直そうと考え、定期テストの全廃を教員に提案した。

 驚く教員たちと議論を繰り返し、成績評価のためにも各学期1回ずつのテストは残すことにした。「では、教科書やノートも持ち込んではどうか」。あえて極端な方針を示し、議論を始めた。再び教員たちと意見を重ね、自ら学ぶ意欲の向上という趣旨に合致させるため、ノートの持ち込みに限って認めることにした。

 定期テストの回数が減っても、教員の仕事量が減ったわけではない。生徒の理解度を確認するために教科の単元ごとの小テストを繰り返し、定期テストでは自学ノートを見直しただけでは解けない設問も考えなければならない。「教員の意識も変わってきている」と栗原校長は手応えを語る。

 1回目の定期テストは6月に実施。生徒の反応は「英単語を書いただけのノートは役に立たない」「問題量が多く、覚えておかないと時間が足りない」。一夜漬けでの高得点は難しく、3年の矢野優那さん(15)は「深く充実した自学に変わってきた」と話した。

 定期テストは学習指導要領で規定されておらず、実施の義務はない。文部科学省も「どのように生徒を評価するかは各校の判断」とする。全国では東京都千代田区立麹町中や世田谷区立桜丘中、金沢市立西南部中が定期テストを廃止。単元テストなどで生徒の課題認識や成績評価につなげている。西南部中の担当者は「生徒が自主的に学ぶ力を大切にしたい」と強調する。

 須恵中の栗原校長は「変化する時代にどう対応していくか、生徒も教員も考えながら学ぶ必要がある。新たな試みの定期テストで、課題が出てくれば修正を加えるなど柔軟な姿勢で臨む」と話している。 (四宮淳平)

学ぶ過程重視へ転換

 福岡教育大の鈴木邦治教授(教育経営学)の話 須恵中のような定期テストの見直しは、テスト結果を重んじる従来の教育から、学びの過程を重視する手法へと転換する動きといえる。テストの回数が減って準備期間が長くなりノートを持ち込めるようになったことで、生徒たちには効果的な復習や級友の学び方に目を向けるという意識の変化も芽生えるだろう。知識や技術がどんどん新しくなる現代にあっては、学び続ける力を身に付ける必要がある。何のために学ぶのかを問い直し、改革していく姿勢が学校現場に求められている。

西日本新聞社